「どうして日本のサッカーチームはこんなに長くウォーミングアップをやっているの?」
先日、ドイツに遠征に来ていた日本のチーム(U-14)のオーガナイズを手伝っていた際に、相手チーム(ドイツ)のコーチが僕に聞いてきたのがその質問でした・・・
「しっかりと時間をかけてウォーミングアップをする」
これは日本サッカー界だけではなく、野球など他のスポーツでも日本でよく見る光景で、故障防止と体を温めるためにも必要な気がしませんか?
しかしこれが、私たちが何の疑問も持たずに受け入れている、世界標準から見たら非常識なウォーミングアップかもしれないのです。
僕が今まで見てきたドイツのチームは年代関係なく皆同じようなウォーミングアップを行っています。
よってここでは、ドイツ式のウォーミングアップの全体的な流れを紹介していきたいと思っています。
今現在、サッカーコーチをしている方、またお子様にサッカーを教えたいと思っている親御さんの少しでも参考になれば幸いです。
目次:
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ドイツ式サッカーの「ウォーミングアップ」を動画で見てみよう!
1.そもそもサッカーの「ウォーミングアップ」とは何か?
まずは前提として「ウォーミングアップとはなにか?」を考えたいと思います。
ドイツサッカー協会のホームページには以下の2つのことが書かれています。
- 「ウォーミングアップとは試合のための準備である」
- 「理想的なウォーミングアップとは構造的である」
それぞれについて少し掘り下げてみます。
その1.「ウォーミングアップとは試合のための準備である」
当たり前のようですが、意外と忘れ去られているのではないかと思うポイントの一つがこの、「ウォーミングアップとは試合のための準備である」という文章です。
あくまでメインはそのあとに行われる試合であって、ウォーミングアップが主となってはいけません。
その2.「ウォーミングアップとは試合のための準備である」
2つ目の文章中にある「構造的」という単語。
この言葉がドイツサッカーに1つのウォーミングアップが浸透している大きな要因だと思います。
後ほど記述しますが、ドイツサッカー協会のホームページ上には理想的なウォーミングアップの流れが細かく書かれています。
もちろんその時の状況(天気や人数、道具の有無、場所の大きさ)によっても変わりますし、チームによっても細かい部分で違いは見られるとは思いますが、ほとんどのドイツのサッカーチームがこの流れでウォーミングアップを行います。
それでは次にドイツ式のウォーミングアップと流れを見てみましょう!
2.ドイツ式サッカー|試合前のウォーミングアップのメニュー
ドイツサッカー協会も推奨、また冒頭でもお伝えしたようにどの年代でも実践しているウォーミングアップと流れとなります。
冒頭の動画でも詳しく見れますが、ここでもそれぞれのメニューの詳細を見てみましょう!
トレーニング名のドイツ語をそのまま発音するのは難しいので、ステップ1、ステップ2という感じで覚えて下さい。
ステップその1.Laufkoordinative,Gymnatische Übung
ここはウォーミングアップにおける導入部分となります。
簡単に説明すると、ジョギングやステップワーク、ストレッチなど行い、この後に行う運動のための準備をする段階です。
いわばウォーミングアップのためのウォーミングアップといったところでしょうか。
ただしドイツサッカー協会のホームページではこの部分でも細かく説明がされています。
基本的にここで行われる運動は「Lauf-ABC」という型から影響を受けています。
いくつかのポイントを挙げると、ストレッチなどを行う際は静止状態は短くし、5秒以上伸ばすことは好ましくないとされています。
またこの段階は特に重要であるので、必ず10分間はメニューに組み込むことが書かれています。また筋肉にゆっくりと負荷をかけるために、20-30メートルの距離で行うことが理想的です。
ステップその2.Kurz Antritten mit Richtungsänderung
ここではスプリント、ダッシュについてが説明されています。
サッカーというスポーツおいてはスプリントが大きな特徴となるのでこの段階も省くことが出来ないとされています。
選手達には合計で4本、8~10メートルのスプリントをさせることが好ましいです。
また急な角度変化(約45度)を含ませることがいいでしょう。走り終わった選手はゆっくりとスタートポジションまで戻りましょう。
ステップその3.Übungen am Ball
ボールを使ったパートとなります。
この部分をウォーミングアップの導入部分に持ってくることもできます。
このパートでは選手個人に任せ、選手達自身の責任に基づいて個別(ポジション別)の準備を行います。
例えばセンターバックの選手ならばロングボールやヘディング、サイドの選手ならばドリブルやセンタリングということになります。
このパートは比較的短い時間(約3分~5分)を利用し、ボール感覚になれるための時間としても使われます。
ステップその4.Kleine Aktivierende Spielformen
ここでは小さいグリッドでのボールポゼッションを行います。
このパートでは直前に迫った試合で求められる多くの要素が詰まっていると考えられます。
おすすめされるのは「5vs5」「4vs4+2」ですが、最も重要な点は、短い時間で集中的に行うということです。
1セット、約90秒間を2~3セット行います。その際セット間休みは十分に(約1分間)取ります。
グリッドの大きさは選手、チームの質によって変更します。大きく作ることによっては選手たちに余裕を持たせることが出来、反対に小さく作ることによって、速いプレッシャーを与えることが出来ます。
ステップその5.Flanken/Tor Schuss
ペナルティーエリア内でのシュートシーンは試合を決定づける瞬間と言えます。
そのため、試合前のメニューからシュート練習を省くことも望ましくないと思います。
ここでは2つの観点から区別していきたいと思います。
全体シュート練習
まずは全ての選手にゴールに向かってシュートを打たせることです。そのためにゴール真正面ペナルティーエリアの少し前からのシュート練習を行います。
ポジション別シュート練習
この一般的なシュートの形と別に、ポジション別、選手別のシュート練習を行います。
ここで大事なことはこの後の試合で実際に起こりうる状況を想定して行うということです。例えばサイドの選手であればセンタリングや内側にドリブルしていってからのシュートなどがあると思います。
この際注意するべき点は、ゴールキーパーの負荷についてです。
スタートから出るゴールキーパーの選手が試合前に疲れてしまっては元も子もないので、サブのゴールキーパの選手に受け渡すところは受け渡して調整する必要があります。
まとめ:ドイツ式ウォーミングアップの時間は?
ここまでがドイツで行われている試合前の一般的なウォーミングアップの形となります。
そして約30分から35分でこれらのメニューが行われます。そしてこの後選手達はロッカールームに戻り、ユニホームに着替え試合前直前のミーティングを行います。
冒頭部分でも書きましたが、ドイツでは多少の違いはあれど、どのカテゴリーでも同じようなウォーミングアップが行われています。
逆に日本ではこれぞウォーミングアップといった形は存在していないように思います。
現在日本サッカー独自のスタイルを追い求めている現状でそういった部分に目を向けてみるのも面白いのかもしれません。