サッカーのデータ分析の新項目「パッキング」の3つの方法

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サッカーの試合前、ハーフタイム、そして試合後とテレビで試合観戦をしていると非常に多くのデータを見られる時代になりました。そしてそれらのデータはより細かく、正確になってきています。

試合を見る側の立場としては、選手のそれぞれの能力、走行距離やスピード、パスの方向や確率であったり、またはチームとしての戦術のデータや過去の対戦成績などが分かることでさらにサッカーを楽しむことが可能になりました。

また実際にプレーする側としても週末の試合に勝つためや、個人のレベルアップのためにもこれらのデータは大きな意味を占めることになります。

そして今ドイツサッカー協会が注目しているサッカーのデータ指標が

「パッキング」です。

パッキングとは、ボールを持っている際にいかに効果的に選手、チームがプレーしているか?を評価するための一つの指標となるものです。

今回の記事を読めば、今までとは違った視点でサッカーを見ることができるようになるかと思います。「パッキング」という考え方を知って、ぜひいつもとは違う視点でサッカーを見てください。

1.「パッキング」とは何かを動画で確認!

2.サッカーの評価点「パッキング」とは

現代サッカーではよりメディアの中でポゼッション率やパスの成功率、またはデュエルの勝率によって誰が良い選手なのか、またはなぜこのチームは勝てたのかなどが議論されるようになってきました。

そしてそれと同時に、試合の勝利にポゼッション率やパス成功率が必ずしも比例していないことを示しています。

そういった背景からドイツサッカー協会は再び「パッキング」に注目するようになりました。

そもそもパッキングとは2016年のヨーロッパ選手権の時に2人の元サッカー選手によって作られました。

考え方としては、ゴールを奪う確率は、自分たちと自分たちが目指すべきゴールの間にいる相手選手の数が少ない方が良い!というものです。これらはオフェンス面だけではなく、様々な場面で非常に役立つものとなります。

3.サッカーで相手ゴールに向かうパッキングの方法3種類

ではパッキングの現象とは具体的にどういう状況があるのか。これには3つの方法があります。

①パスで相手のラインを越える方法

4番の選手から5番の選手にパスが出た後に、ライン間に出来たスペースにパスを通して前にいる8番にパスを通すことが出来ます。これによって4人の選手を越える(パッキングする)ことが出来ました。

②ドリブルで相手のラインを越える方法

5番から6番にパスが出た後、相手選手が2人ボールを奪いにきます。その際ワンタッチでドリブル突破をし、相手のラインを突破します。この瞬間1つのライン、4人の選手を越えた(パッキングした)ことになります。

③ボールを奪ってパッキングする方法

相手のボランチへのパスを青色の8番の選手がパスカットに成功します。それによって5人の選手を置き去りに(パッキング)しました。

「ボールを奪うこと」でもこのパッキングは計算することが出来ます。これはボールを奪った瞬間に何人の相手選手が守備に参加できなくなったか、ということです。ラルフ・ラングニックが率いていた時のRB・ライプツィヒなどは最も典型的なボール奪取により得るパッキング評価が高かった一例と言えるでしょう。

4.サッカーにおける効果的な攻撃で大事なポイントとは?

攻撃時において、サッカーでは相手のゴールに近づくために2つの方法があります。

1つはボールを運んで相手のラインを突破する方法、もう一つは相手のゴール付近でボールを奪う方法です。

この2つの現象がパッキングを測る上で非常に大切になってきます。

効果的な攻撃を評価する上で大切なことは、いかに少ない労力で相手ゴールに近づけたかということです。これを分かりやすくパッキングの評価基準にするとすると、「何人の相手選手を飛ばすことが出来たか」ということになります。

要は、ひとつのパス、ひとつのドリブルで何人の相手選手をその瞬間、試合から除外できたのかということです。

またこのデータはパスの出し手だけではなく、受け手にも大きく関係があります。

例えば最適なスペースでボールを要求し、パスを受け、4人の相手選手を飛ばすことが出来たとすれば、そのパスを受けた選手はパスの出し手と同じだけのポイントが得られます。

11人の中で1番多くのポイントを持つ選手が「最もスピードを上げた選手」として評価され、それはイコール、より効果的に相手ゴールに近づいたとされます。

5.パスの種類によってパッキングの評価基準が変わる

この評価方法ですが、相手を越えるパスであれば全てが同じ1本のパスかと言うとそうではありません。

ここで大事になってくるのが、「相手選手」を越えるパスなのか、「相手ディフェンダー」を越えるパスなのかです。

ここで言うディフェンダーとは、フィールドプレーヤーの中でより低い位置にいる6人の選手のことを指します。

このアイディアの背景には「ひとつ目のラインを超えてディフェンダーの選手がミットフィルダーの選手にパスを入れることは比較的簡単である、1番大事なことは最終的に相手の最終ラインを超えて相手の裏にたどり着くことである」という考え方があります。

ですのでセンターバックの選手が「相手選手」を越えるパスを出すことと中盤の選手が「相手ディフェンダー」を越えるパスを出すことではその1本のパスの価値が変わってくるのです。

6.賢い選手が「価値」となる

ゲームスピードというテーマをメインとして議論をすると、多くの人は選手が時速何キロで走れるかなど、そもそものフィジカル能力の部分に目がいきがちです。しかし、このパッキングではそういった選手ではなく、特にフィジカル的に優れていない選手によりスポットライトを当てていることになります。これによって、より視野の広さであったり、どこにスペースがあるのかなどを見極めることができる能力が高い価値をうけることになります。パッキングでの評価を上げる=ボールを前進させるプレーが増え、必然的にゲームスピードを上げる事につながります。

ただ、これは選手のポジションにも大きく関わってくることになります。

例えばディフェンダー、特にセンターバックの選手などは自分たちの前にサッカーのフィールドのほとんどがあり、また攻撃の始発点となることがほとんどです。なので多くの「相手選手」を越える可能性が高く、と同時に高い評価を得る可能性が高いのです。

多くの中盤の選手やフォワードの選手は越えることができるディフェンダーの選手も少ないですが、だからこそ先ほど言った、越える選手によって、高い位置にボールが入れば入るほどその1つのプレーの価値は上がっていきます。

ただここでひとつ注意して欲しいのが、ただパスが通ればそれで高い評価が得られるわけではなく、パスの受け手が前を向けるかや、次のプレーにスムーズに移行出来るかも、パッキングの評価につながるということです。浮き球で無理やり通したり、相手選手にマークにつかれているのに無理やり通すような、次のプレーにつながらないようなパスは、やはりパッキングの評価レートは低くなります。

一番大事なことはよりゴールに近づくことだということです。

ここまででスピードを上げることが大事だということがお分かりいただけたかと思いますが、どんどん縦パスを入れていけば良いわけではありません。

なぜならば縦パスはよりインターセプト、相手にボールを奪われるリスクが高いからです。

効果的な縦パスを入れるために、相手を動かしライン間に穴を開けるための横パスが重要であり、より確実にゴールに向かうことが大事になります。

まとめ:データをうまく活用する

一番始めにも言いましたが、現代サッカーでは非常に多くのデータが比較的簡単に手に入るようになりました。それはプロの世界だけではなく、アマチュアサッカー界でも同様です。トラッキングデータであったり、自分たちで分析するアプリケーションなども多く目にするようになりました。

データが全てだと言えませんが、うまく活用すれば、必ず自分たちの味方になってくれるものでもあると考えています。

今回紹介したパッキングもそうですし、ありとあらゆるデータをうまく活用してもらえればと思います。

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