サッカーの判断力を鍛えろ!4つの国のトレーニング構成比較

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現代のサッカーは純粋なプレースピードだけではなく、試合状況が変化するスピードも速くなってきています。

状況がめまぐるしく変わっていくそんな現代サッカーでより注目されるようになったのが判断力です。

前回の記事で紹介した「ポジション毎に必要な特徴」でも判断力は重要な特徴として位置づけされていました。

サッカーのポジション毎に必要な特徴は何!?1〜6位までを紹介!』の記事をご参照下さい。

判断力を鍛え、プレーインテリジェンスを高める為には、どのようなトレーニングをどれくらい行うべきか?

本記事では、その答えのヒントとなりえるある研究結果を紹介していきます。

1.ヨーロッパの4カ国におけるサッカートレーニング構成の比較

“Roca, A., Ford, P.R.が行った研究は、ドイツ、スペイン、イングランド、ポルトガルのトップアカデミーU12〜U16のチームを対象にして行われました。

この研究ではトレーニングを3つのカテゴリーに分け、それぞれの国での割合を集計しました。

カテゴリー①能動的な判断あり

  • 小グループでの相手ありの技術、戦術トレーニング
  • 1つのゴールに向かってのトレーニング(例え:2対1)
  • スモールサイドゲーム
  • ゴール無しのボールポゼッション

カテゴリー②能動的な判断なし

  • アスレチックトレーニング(例:ウォームアップ、コンディショントレーニング)
  • 孤立した技術トレーニング
  • 能動的な判断なしのトレーニング

カテゴリー③その他

  • 次のトレーニングへの移行時間(例え:トレーニング説明、マーカーやゴールの設置など)
  • 給水タイム

ドイツ、スペイン、イングランド、ポルトガル、4カ国のサッカー指導

それぞれの国で行われているトレーニングの時間は平均88分±6分でした。

その中で全ての国で一番多く行われていたのは①の能動的な判断ありのトレーニングで、実に約62%±9%の時間をこのカテゴリーに使っていました。

②の能動的な判断なしのトレーニングは約20%±8%となりました。

このデータで面白いのが、①の能動的な判断ありのトレーニングの割合が4カ国全てで多い中、それでもそれぞれの国の色が見て取れる点です。

スペインとポルトガルの育成現場ではドイツとイングランドよりも10〜12%多い割合で①の能動的な判断ありのトレーニングが行われており、その中でもスモールサイドゲームは頻繁に行われています。

イングランドでは他の3カ国に比べると11〜16%も②の能動的な判断なしの技術トレーニングが多く、ドイツでも同じく②の能動的な判断なしのフィットネストレーニングが10〜14%も多いという結果になりました。

国によっての色が現れたデータでしたが、特に①の能動的な判断ありのトレーニングでは、選手の判断力の向上のみならず、実際の試合に近い状況のトレーニングを取り入れる事で、実際に選手の練習参加意欲が増すことが認められています。

その他興味深いデータとしては、4ヶ国全てで練習時間の1/5が次のトレーニングへの移行、給水タイム、トレーニングの説明や準備に使われている事です。

この合間の時間を短くする事で選手達の学習意欲が上がる事も分かっていますので、指導者としてはトライしたい部分になります。”

(一部、DFBアカデミーから引用して日本語へ翻訳“”)

2.ドイツサッカー協会が現在推し進める育成革命〝フニーニョ〟


ホースト・ヴァイン氏が考案した3対3の4ゴールゲーム「フニーニョ」が現在ドイツの育成年代で広く取り入れられてきています。

「フニーニョ」という言葉は英語のファン(楽しさ)とスペイン語のニーニョ(子供)を掛け合わせたもので、昔さながらのストリートサッカーで子供達が得ていた、サッカーに対する楽しみや、技術習得を現代風にさらに改良し、ドイツ人選手達のプレーインテリジェンスを高めると期待されています。

オーガナイズ例

  • コート:32m x 25m
  • ゴール:ミニゴール x4
  • ボール:タッチラインの横に数個のボールを用意しておく
  • ゴールゾーン:ゴールラインから6mまでのゴールゾーンを設定

これはフニーニョのゲームの一つの例に過ぎず、選手の人数、年齢、目的によってコートのオーガナイズやルールが異なる30個以上の形があります。

今までの育成年代での問題とされていた「試合をしてもその時点で上手な選手が多くボールに関わり、それ以外の選手はボールに関わる時間が短すぎる」という部分も、このフニーニョで解消可能ですし、何よりも子供達全員がサッカーを楽しめるという利点があります。

また、オーガナイズ上、多くの選手が1試合の中で多くボールに関わる状況が増える事(反復)でプレーインテリジェンスの向上にも効果があり、認知、予測、創造性、そして試合を読む力が上がります。

現在ドイツのU代表カテゴリーの総監督を務めるマイケル・シューンヴァイツも2019年に行われたU17のヨーロッパ選手権でドイツ代表がスペイン代表に1-3で負けた試合に言及し、スペイン代表選手のプレーに対する決断の早さが大きな差を生んでいた事と、ドイツ代表選手が試合中に想定外の状況に陥った時に対応出来る賢さが足りなかった事を挙げていました。

ここでもしきりにプレーインテリジェンスの向上の必要性を話していて、これから子供達の年代で主流になるこのフニーニョで新しいリロイ・サネ選手やセルジ・グナブリ選手を育てる育成改革を進めています。

3.ドイツサッカー育成革命〝フニーニョ〟のゲーム構成&ルール

ゴール後の素早い切替


・どちらかのチームが得点をする度にタッチライン横に置いてあるボールを失点したチームの選手が拾ってスタート
・ゴールはゴールゾーン内からのみ可能

変わりゆく数的優位


・ゴールを決めた選手がフィールドから出て、失点したチームが3対2の数的優位に
・数的優位の状態のチームが点を決めたら上に同じく、点を決めた選手がフィールドの外に出る。数的不利のチームが点を決めたら、点を決めた選手とフィールドの外で待っている選手が交代
・目標は数的不利のチームが連続で2得点を取る事

ダイアゴナルゴール


・お互いが狙うゴールは対角に設置。ゴール裏にコーンを置く、ビブスをゴールにかけるなどして目印を作る
・選手達が慣れてきたなと感じたら、コーンやビブスを移動して、狙うゴールを変える事で、また新しい状況に選手達が対応しないといけない状況を作る

まとめ:サッカーで使える判断力を鍛えよう!

現代のサッカーはプレースピードも状況の変化も速くなってきていますので、判断力の向上はどのポジションの選手であっても必須になってきています。

ドイツ、スペイン、イングランド、ポルトガルのトップアカデミーも練習の大半を能動的な判断力ありのトレーニングに使い、プレーインテリジェンスの向上に努めています。

いいトレーニングをプランする為のキーワードは

能動的な判断ありのトレーニング!

トレーニング中に生じる合間の時間を減らす!

選手達がボールに関わる時間を増やす!

サッカーを楽しんでもらう!

になります。

現代サッカーで必要とされる「判断力」を是非、皆さんのチームでも鍛えてみて下さい!

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