自分のお子さんを表現する時に、謙遜しながらでも「うちの子は体力がなくって・・・」
または、チームの監督やコーチは「うちのチームの選手達は体力が無くて本当に走れないな・・・」など、愚痴っぽいフレーズを聞いたことがあるかと思います。
しかし、ドイツでのそのようなフレーズを聞いたことすらないですし、「走る」という体力トレーニングに重きを置いていません。
それとは逆行するように、テレビでプロの試合を観戦するとハーフタイムと試合終了後にはそれぞれの詳しいデータが出てきますが、必ずと言っていいほど出てくるものが選手個々とチーム全体の走行距離だと思います。
ではサッカーにおける体力とはやっぱり「走る」ことなのでしょうか?
また、体力そのものを、「走行距離」というだけで、簡単に数字で表すことが出来るものなのでしょうか?
自分のお子さんや自分のチームの子供たちが「今、走れないという体力がなくても、サッカーに必要な正しい体力を付ける方法」をサッカーの本場であるドイツの状況を確認しながら紹介していきます。
目次:
目次
動画でドイツ式「体力」の考え方・鍛え方を見てみよう!
1.そもそも「サッカーにおける体力」とは何か?
動きがある野球の体力、バスケットでの体力、または極端ではありますが、静である将棋の体力、などそもそもサッカーの体力とは何を指すのでしょうか?
より多く走ることが出来たチームが勝つわけではない!
現代、特に日本では先ほどに述べた【走行距離】が重要視されすぎているように感じます。
だから「走行距離」=「体力がある」となり、より体力を付けたチームが勝つというイメージがあります。
しかし、考えてみて下さい。そもそもサッカーは、「どちらが多く得点を奪い、奪われないかを競うスポーツ」です。
マラソンで長距離や100メートル走での短距離で、タイムを競っているわけではないのです。
現実、よーいドンで走って、足が遅い選手はスーパースターの中にも多くいます。
ですが、昔から日本では走ることが目的になってしまっているように感じます。あくまでもサッカーというスポーツで勝つ確率を上げるための一つの方法だということが肝に銘じておく必要があります。
少し厳しい言い方になりますが、ラインニングを中心に、トレーニングという名目で選手やお子さんに強いているほうが、何も考えなくていい楽なコーチングで、指導者としては安易な発想なのです。
体力がない!?体力は簡単に測ることができない!
「あの子は、あの選手は体力がある」
こう聞いたらどんな子供、あるいは選手をイメージしますか?
1500メートル走が速い、クーパー走(有酸素運動テスト)が速い、もしくはシャトルランが永遠にできる、などではないでしょうか?
もちろん基礎的な体力を知る上でこれらのテストは一つの基準になると思います。
ですがこれらの数字良ければ良いほど、体力のある選手といえるのでしょうか?
サッカーというスポーツはマラソンの様に同じペースで長い距離を走るわけではなく、複雑な動きや距離を必要なタイミングで行うスポーツです。
ですので、単純に長距離走が走れる、走れないで評価できるものではないということを今一度頭の中に入れる必要があると思います。
それでも時代とともに走る距離は増えてきている!?
「走る」に重きを置く必要はないといいましたが、後ほどご紹介する「勝つために走る」のは日うよう必要最低条件になっています。
ここで面白いデータを紹介したいと思います。
現代の12~13歳の子供たちで、11人制サッカーで35分ハーフ(合計70分)での1試合平均どのくらい走っていると思いますか?
答えは平均約7キロくらいなのですが、実はこれ1974年のワールドカップ優勝国よりも多いのです。因みに、優勝国は西ドイツ(現:ドイツ)です。
また、皆さんご存じのベッケンバウアー(元ドイツ代表)。
※知らない方は、こちらでご確認下さい。
彼が1試合平均5キロほどしか走っていなかったというデータもあるので驚きですね。
要は、時代とともに走る距離スピードが上がってきており、現代サッカーにおいて勝つために【走る】ということは必要最低条件になりつつあるということです。
しかし、ドイツはそれでも「体力を付ける=走るトレーニング」とはなっていません。
ドイツの育成の現場での体力の付け方なども見ていきましょう!
2.ドイツサッカーの育成では走ることで体力を付けない!?
時代的に走行距離はデータ的に伸びているから、日本人はどうしても「よし、走ることで体力を付けよう!」となりますが、ドイツではその傾向に全くなっていないのです。
その現状を「ドイツ流スポーツテスト」と「ドイツ流走るトレーニングの役割」にて確認しましょう。
体力測定がない!?ドイツ流スポーツテストの現状
「トレセン」、サッカーをやったことがある人なら聞いたことがあると思います。
言わば選抜チームのことを指しているのですが、ここドイツにもトレセン的なものが存在しています。
そこで半年に一回行われているスポーツテストがあるのですが、それらはドイツ国内全土で共通して行われており、全てのデータが一括して保存されています。
選手個々の成長を確認したり、各地域ごとの比較や年代ごとの比較など様々な使われ方をしています。
具体的な内容は書きませんが、様々な種類の項目がある中で驚いたことに1500メートルやクーパー走などのいわゆる体力を計るためのテストがないのです。
これは、ドイツサッカー協会が管理しているスポーツテストです。それに、日本人がイメージする「体力テスト」という種類のものが含まれていないのです。
ドイツ人は「走る=体力強化」と意識していない!?
日本の夏。これでもかというほど走った経験がある方もいると思います。
その目的は様々で、体力向上であったり、もしかしたらただの罰、なんてこともあるかと思います。
ではドイツではどうか?
私は日本ほど走っているチームを見たことがありません。特に日本のジュニア、ジュニアユース、ユースなど育成世代です。
全く走りのトレーニングを行わないかとは言いませんが、走りの中にもしっかりと目的を持たせており、そのほとんどがコンディションを調整するためのものだと思います。
ようするに、「走る=コンディション調整」という意味合いがドイツでは強いのです。
3.すぐに出来る!ドイツサッカー方式での体力の付け方
走るという日本のような体力トレーニングをしなくても、なぜドイツ人は走れるのでしょうか?
おそらく、単純にボールなどを持たない「よーいドン」の素走りを行えば日本人の方がより多く走ることが出来ると思います。
ですが、サッカーの試合となると話は別になります。
倒れるほど走ってきた日本人よりも、試合での後半になっても体力が落ちないドイツ人が多いのは何故なのでしょうか?
理由と体力の付け方その1.
とにかく、ドイツ人は対人が強いです。1対1の局面ですね。
そんなイメージを持っている日本人の方も多いと思います。
実際、ブンデスリーガ(ドイツのサッカーリーグ)のデータ中には対人の勝率が入っており(Jリーグには入っていない)それだけ個人のところにこだわりを持っているのです。
ここでは簡単に説明しますが、ドイツ人の守備は日本人が守備に行ったところから更に1歩、2歩相手に寄せるのが普通です。
守備での「詰め」という意識が日本人の意識より更に強いです。
実際に体験すると分かるのですが、この数歩寄せる、奪いに行くというアクションは思っているよりも疲れます。
ですがドイツ人はそれを当たり前に毎回の練習、毎試合で繰り返し行います。
それが結果、走れるサッカー選手を作っているのだと思います。
ようするに、自分のお子さんやチームの選手たちに、この「詰める」意識を持たせるだけで体力は自然とついていきます。
理由と体力の付け方その2.
ドイツでは小さい頃からずっとトップ選手と同じように毎週末にリーグ戦を行います。
それぞれ降格や昇格があり、すべての試合で真剣に勝ちを狙います。
では日本ではどうでしょうか?
もちちろん毎週末、練習試合や今でこそ、それぞれの地域でリーグ戦が行われるなどしていますが、すべてのカテゴリーで夏と冬に行われる大きな大会に選手もスタッフも標準を合わせていると思います。
毎週末負けられない試合、選手自身が負けたくないと思っている試合を行うということは、例えばチャンスのシーンで得点するためにゴール前に走りこむ、もしくはピンチのシーンで守りたいからダッシュで戻るなどそういったアクションが自然と行われていると思います。
これこそが、「試合で使える体力」を作るための大きな要因になると思います。
試合をただの練習試合にせずに、「勝ちにこだわる」ことも重要なのかもしれません。
この「勝ちにこだわる」という意識が、日本人が「決定力不足」といつも言われている欠点も改善していくと考えています。
詳しくは、『サッカーの決定力とは?ドイツサッカーから学ぶ2つの考え方と練習メニュー例』の記事を参考にしてみて下さい。