少し工夫しただけでパスのレベルがアップ!?ドイツ式3段階パス練習

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選手達のパスの技術や精度を高めたい!と常日頃から考え、トレーニングに工夫を加えている指導者の方は多いかと思います。

パスの技術や精度を高める為にはどの様なトレーニングを行いますか?と聞かれればパッと思いつくのは対面でのパス練習です。

私の個人的な考えですが、日本人という人種は単純な反復練習(対面パス、コーンドリブル)も真面目に取り組む事が出来、そのようなトレーニングからでも高いレベルでの技術習得が可能だと思います。

イメージとしては職人といった感じです。

ただ、世界のサッカーを見渡した時に、パスサッカーで高い技術を発揮する国々の選手達も小さな頃から単純な反復練習を長い時間行っているかというと、そうではありません。

最新のデータではヨーロッパのサッカー先進国の育成では、練習時間の多くを能動的な判断ありのトレーニングに割いており、単純な反復練習での技術習得に割かれる時間は極端に少ないです。

上記の最新のデータについては『サッカーの判断力を鍛えろ!4つの国のトレーニング構成比較』の記事をご参照下さい。

ヨーロッパのサッカー先進国では、ゲーム形式、ポゼッショントレーニング、3:3などの対人トレーニングなどのより実戦に近い形のトレーニングで技術の向上を成功させていると言えるでしょう。

ただヨーロッパでは単純な反復練習は少ないから、日本でも単純な反復練習を減らすべきだと私は考えていません。

日本人の良さを活かしつつ、サッカー先進国のいい部分を取り入れ進化させ、自分達に合ったトレーニングを見つけていけると思います。

この記事では私が日本人としてドイツで指導の勉強をしながら学んだ事も含め、単純な反復練習をする場合に出来る工夫や、能動的な判断ありのパス練習を紹介していきます。

1.単純な反復練習を工夫してパスの技術を高めよう

対面パスはパスの基本的な技術の習得にはもってこいのトレーニングです。

まずは焦る事なく、時間をかけてパスの基本的な技術であるボールを捉える部分、足首の固定、軸足の角度、蹴る姿勢などを学んでいきましょう。

ここで基本的な技術が身についてきたら、次に工夫を入れていきます。

  1. ダイレクト:味方のどちらの足にパスを出すかを決める

  2. 味方にパスを届けるだけではなく、どちら側の足に出したいかまで精度を求める

  3. ダイレクト:とにかく味方にボールを届ける早いリズムでのパス交換

  4. 速いリズムでパスが来るので、パスを出す足を早く判断するリアクショントレーニング

  5. ダイレクト&2タッチ:ダイレクトでパス交換→強いパスが来たらトラップあり

  6. ダイレクトでのパス交換の中で強いパスを出す&トラップをしてボールをコントロールする、という判断を入れる

  7. 2タッチ:出来るだけ強いパスを味方に出す

  8. 試合中にはどんなパスをトラップしないといけないか分からない!強いパスを出すトレーニング+その強いパスを正確にコントロール(とめる)するトレーニング

  9. 2タッチ:トラップから出来るだけ早くパスを出す

  10. 実戦ではボールをコントロールしてからいつも時間が沢山あるわけではない!トラップをしてからすぐにパスを出すリズムを身につけよう

この工夫はほんの1部になりますが、普通の対面パスでも試合で起こり得る状況まで想定して工夫する事でパスの基本的な技術の向上+実戦で起こり得る状況に対応出来る技術が身に付くかと思います。

2.ポジション別/状況別でサッカーで活きるパス技術を習得

対面パスで基礎的な技術の習得をしながらも考えてほしいのは実際の試合の中で出すパスは体の向きから見て真正面の味方に向けてだけか?というポイントです。

結論から言うと実際の試合中では体の向きから見て真正面に立つ味方にだけではなく、斜め前/後ろであったり、平行にパスを出す事もあります。

またパスを受ける立場になって考えても、実戦に近くなると真正面から出てくるボールばかりをコントロールするわけではないので、色々なポジションに立ってのパストレーニングも必要になります。

サイドバックの例:センターバックからボールをもらい、トップ下の選手に斜めのパス

ボランチの例:角度を作る動きでセンターバックからボールをもらい、トップ下の選手に斜めのパス

この様なポジション別のパス練習の中に様々な状況を想定したパターンを入れていきましょう。

フォワードの例

①センターバックからのロングボールをコントロールしてサイドハーフのスペースへパス

②サイドハーフからスペースでボールをもらい、中にグランダーのパスを入れる

異なるポジションで複数の状況を想定したパス練習をする事で、実戦に近い立ち位置でボールを受ける事や、角度を変えたパスを出す経験を積む事が可能です。

このトレーニングをする中でも「ここから2分間はパススピード、トラップからのパスまでのスピード、移動のスピードを上げよう」と言って難易度を変えながら行う事をお勧めします。

3.サッカーに近い複合的なパス練習、ポゼッションなど

今まで紹介してきたパス練習で完璧なパスの技術が習得出来たとしても試合でこの技術を発揮する為には「いい判断」が必要になります。

何故このいい判断が技術を発揮するのに必要にるかと言うと、実際の試合では 3つのプレッシャー(空間的、時間的、対人的)
が存在し、選手達はそのプレッシャーの下で実行(技術)するプレーを選択(判断)しないといけないからです。

試合で活きる技術を獲得する為にはより複合的なトレーニングが必要になります。

複合的なトレーニングとは、先ほど述べた3つのプレッシャーが存在する中でパス練習を行う事です。

簡単な例はゲーム形式、ポゼッショントレーニング、3:3などの対人トレーニングになりますが、この複合的なトレーニングに入る前に行える簡単な能動的な判断ありのパス練習を紹介します。

このパス練習では選手達が自由な発想を持って、パスを出す選手やスペースへ走りこむ動きを決定します。

ボールを出す側、受ける側の選手が、状況状況によって一番いい判断をしていきます。

ダイレクトなのか?2タッチ出来るのか?味方のどちらの足にパスを出すのか?このパスの意図は?足元で受けるべきか?スペースに走りこむか?

様々な状況をイメージして、選手達にこのパス練習をさせて、選手同士の意思疎通を図っていきます。

「今のパスは左にターンして欲しかったんだよ」、「今のはスペースでボールが欲しかった!」など選手同士が話し合い出す様な形が理想的です。

このトレーニングで能動的な判断を入れていき、技術を発揮する判断力も身につけていきます。

この練習からより実戦に近い、対戦相手ありのトレーニングに移行する場合、特に育成年代では選手自身がプレーの選択をする勇気を持てる様に、チャレンジする重要さを伝えましょう。

チャレンジをする中で、ミスが起きたら何故そのミスが起きたのかを選手達に考えさせ、改善する為には何を練習するべきか?という答えを指導者も選手と一緒になって考えてみてもいいかもしれません。

まとめ

間違って理解して欲しくないのですが、ヨーロッパの選手も反復練習はしますし、その大切さも理解しています。

ただ、より能動的な判断があり練習の中での技術習得を多く取り入れているのは間違いありません。

私は日本人が強みとすべき反復練習での技術習得も、工夫を加える事でより効果的に、そしてポジション別/状況別の経験を積めると考えています。

皆さんも色々とアレンジを加えて、自分達のチームに合ったパス練習を作ってみて下さい!

また今回の記事で紹介したパス練習をまた動画にて紹介しますので、是非お楽しみに!

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