サッカーの決定力とは?ドイツサッカーから学ぶ2つの考え方と練習メニュー例

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「日本人選手は決定力不足だ!」

この様な言葉は、日本代表などでも今までにもよく聞いてきたフレーズですね。

これはジュニア世代、ユース世代でも同様です。

一方、ドイツでは、アマチュアリーグでも30試合で40点を取り、得点ランキング上位に食い込んでくる様なストライカーが多数存在します。

彼らのプレーを見ていて感じるのは真逆で〝決定力が高い〟という事だ。

ドイツで長くサッカーに関わってきた私が目の当たりにしてきた、「なぜ日本人選手とドイツ人選手とでは決定力に大きな差があるのか?に言及していきたいと思う。
目次:

日本とドイツとの「決定力」の違いの解説を動画で見てみよう!

1.サッカーの決定力とは?

決定力とは様々なところで話題に上がるワードですが、人によって見解はバラバラ。

シュート数と得点数を見てゴールを決める確率が高い選手が決定力が高い選手なのか?

ある試合で1本のシュートを決め、見事100%の確率でゴールを決めているものの、シュートが撃てる場面でもパスやドリブルを選択して得点チャンスを数回逃している選手は果たして決定力が高いと言えるのだろうか?

または試合に900分間出場している中で10ゴールを決めている選手と、出場時間は600分間ながら同じく10ゴールを挙げている選手ではどちらの方が決定力が高いのだろう?

という具合になかなかはっきりとした定義がない言葉である。

独自の見解ではあるが、ドイツサッカーを紹介するサカストでは決定力を「得点チャンスの数に対してどれだけのゴールを決めきるか(確率)」で定義付けて話を展開しようと思う。

決定力の定義例

例えばペナルティエリア内である選手がボールをもらった際に、ダイレクトでシュートを打てたにも関わらず一度トラップをした事が原因で、相手の選手がシュートコースに入ってきてシュートチャンスを逃し、最終的にパスを選択し、結果ゴールが生まれなかった場合「得点チャンス1に対して0ゴール」という様に考える。

ペナルティエリア内でボールをもらったものの、相手に囲まれた状態でシュートを打てる状況でなかった場合は得点チャンスとして数えない。

ただこの定義は決定力=ゴールと結びつけた場合にのみ通用するものであり、実際にはそのゴールを導いたプレーやアシストも決定力と捉えることも可能だ。

2.なぜドイツ人はサッカーでの決定力が高いのか?

それでは、日本人と比べて決定力が高いドイツ人の何が違うのか?というところを先ずはみていきましょう。

理由その1.教育観念の違い(チャレンジを美徳とする国ドイツ)

私が注目しているのは、ドイツの学校で行われている生徒の成績を「授業への参加度」で評価するシステムがある事です。

授業中に先生が生徒に「この答えがわかる人?」と聞いた際に積極的に手を挙げて回答するという事が、その回答が合っているか間違っているかという以前に評価されるのである。

日本では間違えるのを「恥ずかしい」と思い手を挙げるのを躊躇するということをよく聞きますが、その反対ですね。

サッカーで例えると、シュートが入る、入らないの前に、まずはシュートを打つ、チャレンジしてみるという事になります。

実際のところ、ドイツではサッカーのシーンで指導者が選手達にプレーに対して何らかの問いかけをした時に、選手の8割は手を挙げて何らかしらの回答をしようとする。その答えが合っていようが間違っていようが、です。

さて、日本の授業中であれ、サッカーの指導者が選手達に何か回答を求めた時に、一体何割の生徒や選手が積極的に手を挙げて回答しようとするだろうか?私の経験だけでいうと恐らく1割2割ぐらいです。

どちらの教育制度が良い悪いという話ではなく、考え方に大きな差が出来るのは歴然です。

ことさらストライカーという役割をこなす上ではこの「チャレンジ精神の強さ」は必須になります。

ドイツでは育成年代から、子供達が積極的にシュートを打っているイメージが強い。

極端に言えば、今のシーンはパスを出した方がよかったんじゃないか?と思えるシーンでもシュートを打ちにいく。

判断が間違っていたにせよ、チャレンジする事を良しとするドイツで育つ選手のトレーニングや試合の中で放つ生涯シュート数と日本で育つ選手の生涯シュート数には大きな差が出来ると私は考えます。またその中で養えるゴール感覚は簡単には手に入らないものです。

今まで私が出会ってきた日本人の選手達は逆に「なぜ今のシーンでシュートではなくパスを選択したんだ!?」と思ってしまうプレーをする事が多かった。

サッカーのゴール前では日本人のいい部分である「相手の気持ちを考える」や「空気を読む」という長所がゴールを決める(シュートを撃つ)というプレーを減らしているのだ。

そういう部分から、相手ゴールに近い位置でもプレーの選択肢の最上位にシュートではなくパスを無意識に選んでいるかもしれない。または自分がこのタイミングでパスを選択せずにシュートを撃って外れてしまった時の事を考えチャレンジが出来ない、という事も大いにあると思う。

ある意味空気を読まずにシュートを撃ちまくりチャレンジし続けているFWは日本では貴重ではないかと思う。

この様にドイツでは子供の頃からの教育観念が、いいストライカーを生み出すのに一役買っているのではないかと私は考えます。

だから、あなたのお子さんやチームの選手がシュートを打つことを積極的に褒めるようにするだけでも子供たちのチャレンジ精神は養われてき、それが決定力に結び付く大きな第一歩となります。

理由その2.勝敗の結果にこだわる

ドイツ人はとにかく「負けず嫌い」です。

喜びや怒り、悔しいといった感情を表に出すことは普通の事で、たとえ11部の試合であっても、力が均衡した同士の試合になるとお互いの感情がぶつかり合うことも多い。

私は何度もドイツのアマチュアリーグの試合の盛り上がりが日本のアマチュアリーグでも見れるだろうか?と考えてみたが、恐らくあんなにも見ているものまで興奮させる様な雰囲気はなかなか日本のアマチュアレベルでは見れないと思う。

そんな雰囲気を作り出しているのは絶対的に勝ちにこだわるドイツ人の負けず嫌いな性格が関係している。

勝つために必要な要素は沢山あるが、その中でもゴールが締める割合は高いだろう。

結果にこだわるドイツ人は、このゴールを取ることに対する執着心や評価は日本人の持つそれとは少し違うものがある。

もちろんドイツでも結果ばかりではなく、内容や過程を大切にする指導者は多く存在するが、例えばどんなに守備をせずにチームプレーが出来ないFWでも点を多く取れるのであればOKと、結果だけを評価する場合も多々ある。

逆にFWとして前線から献身的な守備が出来るチームプレーヤーでもゴールを取れなければ「点が取れないFW」と見られてしまう。

ゴールを決めなければ勝てない、だからFWは点取り屋としての仕事をしろという事だ。

育成年代からこのゴールを決めることの重要性を本能的に理解している選手達がドイツには多く存在するのではないかと私は考えています。

ドイツのアマチュアリーグではよく、味方選手がサイドの高い位置でボールを持ち相手選手との1対1の状況で、FWの選手がボール保持者に対してサポートに入らずにペナルティエリアの中に侵入していったり、ペナルティエリア内でボールを待っているというシーンを見ます。

ここには、そのサイドでの1対1に勝ってセンタリングを上げて来いというメッセージが込められています。

1番ゴールが入る確率が高いゾーンでボールをもらおうとしているのです。

このボールに多く絡むプレーではなく、ボールに寄らずに、ゴールを決めれる可能性が高いプレーを選択している部分に、ドイツ人の結果にこだわる姿勢が見て取れると感じています。

日本ではFWであっても多くの能力が求められる場合が多いと感じていますが、決して足元は上手くないし、攻撃の起点にもなれないが、最後には泥臭くゴールを取れる様なFWを評価し、彼らの狙いが何なのかを理解していくと面白い点取り屋が育ってくる可能性が高くなるかもしれないなと思っています。

きれいなゴールを評価するのではなく、とにかくゴールを打つというチャレンジ精神、またそれが勝利に結びつくのであればそれを評価するという真剣勝負が決定力、また『サッカーの体力を付ける!走る練習をしなくても走れるドイツの2つの理由と方法』の記事でもある、体力を付けることにも自然と繋がっていくのです。

3.サッカーの決定力を高めるための方法

ここではサッカーでの決定力を高める方法を「選手」と「指導者」目線の両方で見ていきます。

「選手目線」から決定力を高める

まずはサッカーが点を奪い合うスポーツだという事を念頭に置いてプレーを整理していく必要があります。

どれだけ華麗なドリブルをしても、どれだけアクロバティックなシュートを放っても、ゴールにボールが入らなければチームを勝利に導く事は出来ない。

選手それぞれに役割はあるが、ストライカーは点を取ってなんぼ、なのである。これを先ず念頭に置くことが大切です。

前線の選手がゴールを決めるのに、一番手っ取り早いのが、アタッキングサードでボールをもらった時にミドルシュートを打ってゴールを決める事だ。

しかし、そんなに簡単にシュートは打てないのが現状ですね。

相手ゴールまでの距離が遠い、相手のプレッシャーが強くシュートが打てない、などの要素が絡んで来ることでパスやドリブルという違う判断を迫られる事になる。

例えば上に挙げた様な理由が原因でシュートを打てないとなると、次に考えるのは「どうすればより相手ゴールの近くでボールをもらえるか」「どうすれば相手のプレッシャーを受けない位置でボールをもらえるか」という事になる。

この考え方が決定力を高めるのに非常に重要になります。

選手のタイプによって自分のゴールを決める形はそれぞれなので、一人の選手はハンターの様にセンタリングが上がってくるチャンスを淡々とペナルティエリア内で待ったり、またもう一人の選手は常に相手DFラインの裏に飛び出してボールをもらい相手GKとの1対1をものにしようと裏に抜ける動きを繰り返したりする。

ストライカー達は、ゴールを決める為に自分が何をすべきかを考え、実践しているのです。

大事な事は自分のタイプやストロングを理解し、繰り返しトレーニングする事だと私は思います。

元オランダ代表のロッベンといえば、右サイドからカットインして強烈な左足でゴールするという彼お決まりのシュートパターンがあるが、ロッベンが天才だから出来るのではなく、何度も何度も繰り返しこのパターンのシュート練習を繰り返した事で会得出来た努力の結晶だと個人的には思っています。

バイエルン在籍時のロッベンのシュート練習動画 → https://www.youtube.com/watch?v=BQUlHVjKzf0

決定力を上げるのに大事になってくるのは「自分で考える」という事です。

今は簡単にYoutubeなどで自分が好きな選手や、理想とする選手のプレーを見る事が出来るし、日々練習するチームの指導者から成長する為のヒントをもらったりも出来る。

ただ動画で見た事や、指導者からのヒントをただただ実践するだけではもったいない。

実践し、実際に自分のプレーやそのトレーニングを自己評価する。

いい結果が出ていれば続け、結果がついてこない場合はトレーニング法を変えたり、別のヒントを探し、そしてまた実践する。

日々自分で考える事で自分に合ったスタイル、形を身につけていかなければならない。

ロッベンだってきっと得意の形で多くのシュートを外してきたけど、チャレンジする事はやめなかったはずだ!!!

「指導者目線」から決定力を高める

選手達がチャレンジする事の大切さ、楽しさを伝えていくのが指導者の役目です。

選手達の年齢が若ければ若いほどチャレンジしたことによって起きるミスを認めてほしい

もちろんチャレンジは大切といっても、チャレンジのプレーであれば同じミスを何度も繰り返してもいいという意味ではありません。

チャレンジし、ミスをする事で、次どの様に同じシュチュエーションでのプレーを工夫するか、選手達が考えれる様に持っていく事が出来ればと思う。

指導者に色や個性がある様に、選手達も皆それぞれ個性があって、1週間で何かに気づきプレーに変化が出始める選手もいれば、3ヶ月経ってやっと変化し始める選手もいる。

選手それぞれに合ったアプローチの仕方を工夫していく事が大事になってくると私は思います。

4.サッカーの決定力を上げる練習メニュー(制限を付ける)

これまで決定力の定義や考え方を説明しましたが、実際にドイツで決定力を上げるために行われている練習メニューを最後に紹介します。

「一番ゴールが入っているエリアは何処だ!?」

現代サッカーで一番ゴールが入っているエリアはペナルティエリア内です。

ペナルティエリア内でもゴールエリア幅の中央のエリアが一番ゴールの確率が高く、ゴールを取った際の選手のボールタッチ数はほとんどが1タッチ、それに次いで2タッチとなっている。

そうとなればドリブルからのシュートを練習する以上にペナルティエリア内でのダイレクトや2タッチでのシュートを練習しない手はない!!!

ペナルティエリア2つ分のゾーン(ダブルボックス)で行われる5対5などのシュートゲームは今までにも行った指導者も沢山いると思う。

ただ、こんなにも狭いエリアの中でボールをもってゆっくりと1対1に持ち込めるシーンは試合でいくつあるだろうか?

このエリアではシュートを常に意識したボールの受け方、持ち方を選手達に身につけてもらいたい。

先ずはゴールを見ること!を徹底していく。

このゲームに制限をつける事で選手達のシュートへの意識を高めたい。

例えば

  • 選手は3タッチ以上しなければパスは出せない(GKは例外)
  • ただしシュートだけはダイレクトでも2タッチ目でもOK

この制限では極端に個人のプレーが増えてしまうが、シュートの意識、ボールをもらう前のポジショニング、ボールをもらう時の体の向きなどの意識は高まります。

ここに例えば、「3人目の選手へのパスはダイレクトのみ可能」というルールを付け足しても面白い。

シュートへの高い意識は保ちつつ、3人目を使うパス、3人目の選手の動き出しもイメージさせる事が出来る。

この練習だけでも、試合で勝つための「決定力」は自然と上がっていきます。

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