ドイツサッカーにおける効果的なパスとは?2つの評価基準

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サッカーの1試合中(90分)の間に出されるパスの本数は1チーム辺り約500本と言われています。

勝利を決定づけるパスや、失点に繋がるミスパスなど、はっきりと目に見えて1本のパスの評価が出来る場合もありますが、そんなパスは上記に挙げた1試合中の500本のパスの中でも数えれるほどです。

それ以外の何100本というパスが良いパスだったか、それとも悪いパスだったか、皆さんはどの様に評価されているでしょうか?

ドイツでは、パスの評価基準として「パッキング」という考え方を取り入れています。

パッキング能力を鍛えるためには『パススピードが鍵?!ドイツサッカー式パス練習と6つのポイント』の記事をご参照下さい。

本記事では、この「パッキング」という考え方の説明をした後に、オランダで現在研究されている効果的なパスの評価法を紹介していきたいと思います。

1.ドイツサッカーでのパスの評価「パッキング」

ドイツ代表として3試合に出場したシュテファン・ライナルツが作ったパスの指標が「パッキング・レート」です。

これまでの試合では選手それぞれやチームのパス成功率が、評価基準としてデータで出ていましたが、この純粋なパス成功率には何気ないセンターバック間のパス交換さえも含まれています。

この純粋なパス成功率だけでは、試合の優位性を示したり良いパサーを評価するのは簡単ではありません。

その点、このパッキング・レートは1本のパスをポイントで評価していき、選手それぞれやチームがどれくらい効果的なパスを出せたかを数値化します。

例え:パスの出し手の1本のパスで相手の4選手を置き去りにした=4ポイント ※正確なポイントの計算は、パスを受けた選手が次のプレーに移行しやすいかまでも考慮される

パッキングポイントの計算の仕方は細かく設定されており、パスの出し手が1本のパスで何人の相手選手を越える事が出来たか、だけではなく、受け手のポジショニングを評価する事も可能です。

またただ単に多くの相手選手を越えるパスを出せば良いだけでなく、そのパスを受けた選手が次のプレーに移行しやすいパスかどうか?という部分もパッキングの評価に関わります。

例えば上記の図の様に相手の4選手を越えるパスを出せたとしても、パスの受け手が前を向けない状況であればパスの効果は低いと見なされ4ポイント x 20% = 0,8ポイントしか得れない計算となります。

パッキングの正確な計算の仕方はまた違う記事で紹介していきたいと思います。

2.効果的なパスとは?

画期的なパスの評価法であったパッキングでしたが、最近ではこのパッキングの考え方の主となる縦パスだけを効果的なパスと評価するべきではないという意見も出てきました。

この新しい考え方の元、現在オランダで研究されているパスの評価基準が1本のパスで相手の組織的な守備陣形をどれだけ崩す事が出来るかになります。

パッキングの評価基準では、1本のパスがゴールを決める事に対しどれほどの影響を与えるかがポイントになっていた為、縦方向に出されるパスが重要視されていました。

今回紹介する新しいパスの評価基準は1本のパスで相手の組織的な守備陣形をどれだけ崩す事が出来るかですので、横にボールを動かす事で相手のディフェンスラインにギャップを作るきっかけになったパスも評価対象となります。

例え:1本の横パスで相手の左センターバックと左サイドバック間のギャップを広げる事に成功

この様に1本のパスによって起こった相手の組織的な守備陣形の崩れを相互関係と捉え、評価ポイントとします。

縦、横、そして後方へ出すパスまでも評価出来る考え方になります。

3.相手の組織的な守備陣形を崩すには?

「ボールを動かせ!」というフレーズはよく聞きますが、ボールを動かす事が目的になり「なぜボールを動かすのか?」という事を選手達が理解出来ていない事があります。

ボールを動かす事は手段であり、その目的は相手を動かす事でなければなりません。

効果的なパスでボールを動かし、相手を動かす事でスペース(ギャップ)を作り出し、そのスペースを使い得点機会を演出する。

では、具体的に相手を動かす効果的なパスとは?という部分を書いていきます。

バイタルエリアで崩す

そのエリアにボールが入れば得点の確率が高くなると言われているバイタルエリアにパスを入れていく事は効果的です。

このエリアにはボールを入れられたくないので、対戦相手もコンパクトな陣形でこのエリアにボールを入れさせまいと守備しますが、もしパスが通りフリーでボールを持てる状況が出来れば相手はすぐにでもボールホルダーを潰しに来るでしょう。

ボールの奪いどころを見抜く

相手のサイドバックにボールが入ったら全員で奪いにいく

相手がゴールキーパーにバックパスをしたら全員でラインを押し上げよう

の様に、チームによっては相手のボールを奪う為にチームで共通認識を持って戦術的に守備をしてくる場合もあります。

例えば、相手サイドバックに対して全員でコンパクトにスライドして守備をしてくるチームの場合、ボランチからサイドバックにボールが出たタイミングで守備陣形が大きく動く事になります。

この守備陣形が大きく動く時こそギャップが出来る可能性が高まります。

ゴールキーパーを除いた10人の味方全員が同じタイミング、そして同じ速度で守備陣形を保ったままスライドをする事は簡単ではないからです。
この時ボールを受けるサイドバックの選手が受けるプレッシャーは凄く大きなものになりますが、そのプレッシャーから抜け出し、ギャップをつく事が出来れば大きなチャンスを産む事が出来ます。

この様に相手のボールの奪いどころを見抜く事で、あえて相手を食いつかせるパスを使う事も可能になります。

まとめ

パッキングに加えて本記事では新しいパスの評価基準を紹介してきました。

相手の組織的な守備陣形を崩すという事がメインになりましたが、私個人としては 相手の頭(視線)を振らす/切らすパスも非常に重要だと考えています。このパスについてはまた別の記事で紹介していきたいと思います。

また今回紹介した相手の組織的な守備陣形を崩すパスの具体的なトレーニング例を載せた記事もアップしますのでこうご期待を!

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