ドイツサッカーとは何か?ディフェンス編5つの大切な方針

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

自分たちのサッカーってなんだろう?

指導をしていてそれをしっかりと説明できる人は少ないかと思います。

ですがしっかりとした基準を持っていることは強みになりますし、またその人、チームの色となるでしょう。

ドイツサッカーとは何か?

こういったテーマで2回にわたって「基礎編」「攻撃編」と見てきました。

ドイツサッカーとは何?7つの「ガイドライン」基礎編?』←基礎編はこちら。
ドイツサッカーとは何か?オフェンス編5つの大切な方針?』←攻撃編はこちら。

第3回目となる今回は「守備編」です。

ドイツサッカー協会が定めているドイツサッカーのガイドラインをもとに話を進めているのですが、そこでもこのガイドラインに従えば、誰でも強いチームを作ることができる、いい選手を育成することができると書かれています。

この記事が、皆さんにとって、自分たちのサッカーとは何かを探すヒントになればと思います。

ドイツサッカーとは何か?守備編を動画で確認!

1. ドイツサッカーの大きな特徴

サッカーを見ている中で、大きく盛り上がる瞬間。

それはもちろんゴールの瞬間であったり、誰もが想像もしていなかったスーパープレーが生まれた瞬間だと思います。

ここサッカーの本場、ドイツでは、先ほど挙げた2つの瞬間はもちろんですが、それと同じくらい大きく盛り上がる瞬間があります。

それが良い形でボールを奪った瞬間です。

これはよく耳にする言葉で「ヨーロッパと日本では、サッカーを見に来ているお客さんの反応が違う」というものがあります。

サッカーを知っているお客さんが多いという表現だと思いますが、これはプロの世界だけではなく、アマチュアの世界でも同じことが言えます。

例えば、サッカーの試合中に1人の選手が華麗なドリブルを見せたとします。もちろんそのプレーでもお客さんは盛り上がるでしょうし、チームメートも「ナイス」「よくやった」と声をかけてくれるでしょう。

ですがそのプレーと同じ、または(個人的には)それ以上にお客さんやチームメートが盛り上がるプレーが守備の部分なのです。

良い形でボールを奪った

頑張って走って相手にプレッシャーをかけ続けた

この様なプレーがドリブルができる、テクニックがあるというポイントと同じくらい評価される国がドイツなのです。

以上の例からドイツサッカーにおいて、いかにディフェンス面が重要視されているのかが分かると思います。

2. ドイツサッカー守備編の5つのポイントを紹介

前回、前々回と同じく、道路をモチーフとした図を用いて説明していきたいと思います。

なぜ道路なのか、この図にはどういった意味があるのかなどは前回の記事をご参照ください。

コンパクトな守備を意識する

Konsequent aus einer Kompakten Organisation verteidigen
(コンセクエント アウス アイナー コンパクテン オーガニザチオーン フェアタイディゲン)

まずは一番左の部分ですが、直訳すれば、「一貫してコンパクトにオーガナイズされた陣形で守備をしましょう」ということです。

コンパクトな守備というワードは、サッカーの試合を見ていて実況や解説の方が言っているの聞いたことがある人も多いかと思います。

このコンパクトな守備を具体的に説明するとすればコンパクトな守備=選手間の距離を近くして守備することと定義づけができるかと思います。

ただし、よくテレビで言っているコンパクトな守備をイメージしてしまうと、自分たちのゴール前でみんなが固まって守備している様子を想像してしまう人もいるかと思いますが、チーム全体がまとまって守備をしているということがコンパクトな守備と言います。

ボールに対してチーム全体が右や左、または前や後ろに移動するということが重要であるということがこの部分では述べられています。

ゾーンで守る、と同時に相手選手を意識に入れる

Im Raum,aber gegenerorienitert verteidigen
(イム ラウム アバー ゲーグナーオリエンティアート フェアタイディゲン)

「スペースには立つが、相手選手を意識に入れて守備をしよう」

「ゾーン」と「マンマーク」という言葉を聞いたことがあるかと思います。

「ゾーン」とは簡単に言うと選手それぞれに守るべき場所を設定し、その場所の範囲をディフェンスするというものです。

「4-4-2」や「3-5-2」などのフォーメーションというものは、いわゆる選手たちのそのいるべき立ち位置を定めたものということです。

そして「マンマーク」とは場所に対してディフェンスするのではなく人に対してディフェンスするということです。

極端に説明すると、自分がマークしている選手が右から左に走っていった場合、ゾーンディフェンスだとマークの受け渡しをしますが、マンマークディフェンスだと、自分のマークしている選手にずっとついて右から左に移動することになります。

現代サッカーでは単純なマンマークディフェンスをしているチームを見ることが少なくなりました。

ゾーンディフェンスが主流になってきていますが、それでも結局最終的にボールを受けてアクションを起こすのはスペースではなく相手選手になります。

この事からスペースに立ちながら、相手選手を意識したポジション取りをした守備が求められています。

3つのプレッシャーでボールを奪う

Ball gewinne durch Raum-, Zeit-, Gegnerdruck provozieren
(バール ゲビネ ドュルヒ ラウム ツァイト ゲーグナードゥルック プロボチーレン)

「空間的、時間的、相手選手によるプレッシャーを使ってボールを奪う」

まず、そもそもドイツではプレッシャーというものを3つの種類に分類しています。

それぞれ簡単に説明すると、一つ目が「空間的プレッシャー」です。

これはコンパクトな守備にも通じる部分なのですが、スペースを狭くすることにより、与えることができるプレッシャーです。

二つ目が「時間的プレッシャー」です。

これは相手が判断をするまでの時間が少なくすることで生じるプレッシャーの種類になります。

そして三つ目が「相手選手が直接与えるプレッシャー」です。

これが一番皆さんが思っているプレッシャーに近い部分かと思いますが、実際に相手選手がボールを奪いに来ることで生まれるプレッシャーのことを指します。

以上の3つの種類に分けられ、これら3つのプレッシャーを使って、ボールを奪える状況を誘発するということです。

ゴールを守るためにではなく、ボールを奪う、奪うことのできる状況を作る、そのためにどのように相手にプレッシャーを与えるかを表しています。

適切な距離感でゴールを守る

Je näher zum Tor, desto näher am Gegner sein!
(イェ ネーア ツーム トーア デスト ネーア アム ゲーグナー ザイン)

「自分たちのゴールに近づけば近づくほど、相手選手との距離は近くしなさい」

上に直訳を書いたのですが、ゴールを守るためにもその都度で適切な距離感で守備をする必要があります。

最終的にボールをゴールに入れるのは人です。

ドイツの指導者講習会でも毎年一つのビデオを見るのですが、失点しているほとんどのシーンで「ディフェンダーの選手が、相手の選手を捕まえれていないことが多い。そしてそれがブンデスリーガ1部のレベルでも普通に起きている」と言った様な話をされます。

特にペナルティーエリアの中となれば、まずは人を捕まえること。

意外と意識できていない部分かと思いますので、もう一度見直してみても良いかもしれません。

最後は気持ちでゴールを守る

Von Mut zum Ballgewinnn hin zum Willen, das Tor zu verteidigen
(フォン ムート ツーム バールゲビン ヒン ツーム ビレン ダス トーア ツー フェアタイディゲン)

個人的に一番ドイツらしいかなと感じている項目なのですが、

「勇気を持ってボールを奪いに行き、最終的には気持ちでゴールを守る」

まず勇気を持ってという部分。ボールを奪いにいくということはそれと同時に抜かれた時のリスクが生じます。

「抜かれたらどうしよう」

「味方の戻りを待った方がいいんじゃないか」

こういった気持ちからボールを奪いにいくことが出来ない日本人の選手も数多く見てきました。

ですがドイツでは相手の前で止まっていることを守備していると評価されません。

でも一発で抜かれたらピンチになるじゃないかと思う方もいるかも知れませんが、本気で奪いに行った時には相当なプレッシャーがかかっており、その次のディフェンダーで奪えたり、またはミスが生じたりするものです。

そして最終的には気持ちで守る。

ドイツ人は基本的に負けず嫌いだと思います。

そしてその感情を素直に表に出すことができます。

ですので、練習中から体を張ってシュートブロックに行きますし、外から見ていて危ないんじゃないかと思う様なシーンでもボールに突っ込んでいったりします。

この項目ではサッカーのメンタル面に関して書かれていますが、個人的にはこのメンタル面に関して言及していること自体がすごいと思いますし、これこそがドイツサッカーの基盤にあるのだと感じています。

まとめ:積極的にボールを奪いに行こう

図の黄色部分に書かれていることなのですが、Aktiv zum Ball gewinn(アクティブ ツーム バール ゲビン)、訳すると、「積極的にボールを奪いにいく」なのですが、まさにドイツサッカーを表している言葉だと思います。

もちろんゴールを守ることが目的なのですが、自分たちがボールを持つために、ゴールを取るためにボールを奪うことが大切なのです。

守備に関しては多くがリアクションでプレーしてしまいますが、自分たちからアクションしてボールを奪う。

ここを意識して今回紹介した各ポイントを参考にして皆さんも強いチームを作って下さい。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加